ブラジルに住む「ガウーショ(Gaúcho)」って人たちのことを聞いたことがありますか?ガウーショとはいったい誰なのか?彼らのポルトガル語の「発音」や「方言」にどんな特徴があるのか?ガウーショ文化圏(サンタ・カタリーナ南部)に住んでいた私が解説します!
「ガウーショ(Gaúcho)」ってどんな人たちのこと?
「ガウーショ」って言葉を日本で聞くとしたら、レディースファッションの「ガウチョパンツ」とか、サッカー選手の「ロナウジーニョ・ガウーショ」とかでしょうかね。
彼らの起源は、17世紀までさかのぼりますが、アルゼンチン、ウルグアイ、ブラジルの南部などに住んでいた、スペイン人と先住民との混血の人たちのことです。
彼らはアメリカのカウボーイとよく似ていて、野生の牛や馬を追って、その生計を立てていました。その独特の生活様式、服装、話し言葉は「ブラジル」の中でも異彩を放つものでした。
現在では、そうした社会的階層としての「ガウーショ」はもう存在しませんが、ブラジル南部に住む人(特にRio Grande do sul州)は、いまでも「ガウーショ」を自称し、その子孫であることを大変に誇りに思っています。
帽子をかぶって、赤いハンカチーフのようなものを首に巻き、ボフッとしたズボンをはいている、これが一般的なガウーショの服装ですね。
わたしが住んでいたのは、サンタカタリーナ州の南部でRio Grande do Sul州とは川を挟んで隣だったので、ガウーショの文化を大きく受けている地域でした。
ガウーショの服や工芸品を売っているお店も多かったですし、下の写真のような「ガウーショ・ダンス・フェスタ」のようなものもありました。
しかし、普段の生活で一番そのガウーショの影響を感じるのは、彼らのポルトガル語の「発音」と「方言」でしょうか。
ではまず、どんな独特な「ポルトガル語【発音】」があるのか見てみましょう。
「ガウーショ訛(なまり)」のポルトガル語?
サンパウロ州から、このガウーショ文化圏の土地に引っ越してきて最初にびっくりするのが、ポルトガル語の発音の違いです。
最初は正直、町の人のポルトガル語を理解するのに苦労しました。
いくつかその違いに法則はあるのですが、「イントネーション」に関しては文字では説明が出来ないので、とりあえず一番分かりやすい「発音の違い」だけ説明しますね。
それは、
「標準ポルトガル語の「ヘ」の発音が「レ」になっている」
ということなのです。
よく分かりませんよね、これだけでは。
簡単に言うと、ブラジルのほとんどの地域では、ポルトガル語の発音にこのような規則があります。
①[単語の頭にRが付いている場合の発音] ra(ハ)・re(ヘ)・ri(ヒ)・ro(ホ)・ru(フ)
例えばこんな感じ。
Rabo(尻尾):ハーボ
Recibo(領収書):ヘスィーボ
Rio(川): ヒオ
Roupa(服):ホウパ
Ruim(悪い):フーイン
②[単語の中にRRが付いている場合の発音] rra(ハ)・rre(ヘ)・rri(ヒ)・rro(ホ)・rru(フ)
例えばこんな感じ
Amarrar(縛る):アマハール
Arrependimento(後悔):アヘペンジメント
Corrigir(正す):コヒジール
Socorro!(助けて!):ソコーホ!
Arrumar(片づける):アフマール
お分かりですか?ちょっとごちゃごちゃしていますが、要は「R」の文字が出てきたら、ポルトガル語は基本的に「ハ行」の発音になるということです。
日本語の場合は「R」が出てくると、「ラ行」になるので、違いますよね。
ではでは、我らが「ガウーショ」の場合はどうなるのか?
そーなんです、日本人と同じ「ラ行」の発音になるのです!
つまり、表で比較してみると、このようになりますね。
標準ポルトガル語の発音 | ガウーショの発音 | |
---|---|---|
①Rio[川] | ヒオ | リオ |
②Roupa[服] | ホウパ | ロウパ |
③Carro[自動車] | カーホ | カーロ |
もしかすると、一文字だけの違いなので、あまり変わらないと思いますか?
それが、話をしていると、結構この一つの文字の発音で意味が分からなくなるんですよ。
例えば、地元の人が私にこう言ったことがありました。
「No Japão, carro é caro?(ノ ジャパォン カーロ エ カーロ?)」 ※「日本では高いは高いの?」
聞いた瞬間、頭が少しフリーズします。
「高いものが高いのは日本だけでなく、ブラジルもそうだろ?何をこの人は聞きたいんだ?」
でも、その発音に「ガウーショ発音フィルター」をかけると・・・
「No Japão, carro é caro?(ノ ジャパォン カーホ エ カーロ?)」 ※「日本では自動車は高いの?」
「おぉ、そうか!この人は自動車のことを聞いているんだ!」と理解できるわけです。
これは、分かりやすいようにシンプルな例を紹介しましたが、文字で読めば問題ないこよも、こうやって話の中で発音で聞くと、ちょっとした混乱が頭の中で起こってしまうのです。
でも、人間の脳ってすごいですようね。 時間がたてば、その発音で理解できるようになるんですから。
では、つぎに「ガウーショの【方言】」について説明しますね。
ガウーショの「方言」6選!
以前のブログで少し、ガウーショの方言に関しては触れました。
ここでは、普段の生活でよくお目にかかる「ガウーショの方言」のベスト6を紹介します。
①「Tche(チェ)」
これ、町の中でホントによく聞こえてきます。サンパウロで聞いたことは一度もありませんでした。
この言葉自体には意味はないんですが、なんかこう「嬉しいとき」や「ちょっと不満を感じる時」などに使う言葉です。感嘆詞って言うんですかね。
”Tche!! muito bonitinho seu filho!!”(うわぁ、あなたの息子さん、なんてかわいいの!!)
②「Bah(バー)・Capaz(カパァーイス)」
この2つの単語は、ほぼ同じ意味です。これも感嘆詞の一種ですね。
日本語だと、「なんてこった!」とか「マジで?!」、あるいは「すっげー!(死後)」、みたいな。
”Bah!!(Capaz!) Não sabia que tenho que terminar meu trabalho até hoje!!”(なんてこった!今日までに仕事を終わらせないといけないの知らなかった!)
③「Tri legal(トゥリ・レガル)」
「Legal」って単語の意味が、「イケてる」「Cool」「かっこいい」なので、「Tri(3倍)」が付くことで、「3倍イケてる(=むちゃくちゃすごい)」ってことになります。
④「Guri(グリ)/Guria(グリア)」
これは「男の子」「女の子」っていう意味のガウーショ独特の表現です。
普通のポルトガル語だと「Menino」「Menina」になります。
この言葉もよく、サンタカタリーナでは聞きました。
最初のころは、町の人に、
“Meu guri está em casa hoje. Tenho que cuidar dele.”(今日は、私の「グリ」が家にいるんだよ。だから面倒を見ないといけなくて。)
とか言われても、「グリ?なんやろ?動物?」みたいな感じでした。
⑤「Cacetinho(カセチーニョ)」
これは以前のブログに説明済みです。
「フランスパン」のことですね。
⑥「Me(メー)」
これも、会話の中でホントによく聞く感嘆詞です。
英語でいうところの「Oh my God…」と同じシチュエーションで使います。
あんまりみんなが「メーメー」言っているので、最初は「ヤギの鳴き声かな?」って思ってました(笑
「Meu Deus!!(私の神様!)」のMeuが短くなって「Me」になったんだそうです。
こんな感じで使います。
Bさん:Meeee….. (なんてこった・・・)
「ガウーショ方言6選」、いかがでしたでしょうか?
もしブラジル人と話す機会があったらぜひ使ってみてください。
きっと、大喜びしてれると思いますよ! (あるいは理解してもらえないかも・・・)
おまけ:ガウーショならではの面白い表現
おまけで、寒い日に使える「面白ガウーショ表現」を1つ紹介します。
これも、ガウーショ独特の表現の一つです。
寒い日に、犬が地面が冷たくて、上の写真のようにしている感じを比ゆ的に表している表現です。
つまり、「今日はものすごく寒い日!!」っていう意味です。
ぜひ、覚えておいて、ブラジル人に使ってみてください!
どんな反応をするのか楽しみですね。
「話せるポルトガル語」を「独学」で学んでみたい方はこちらをどうぞ・・・
まとめ
今回の記事では「ガウーショの発音と方言」について書きました。
ブラジルは「移民大国」です。 そして、その移民が作り上げた文化や習慣が、長い時を経て、現代のブラジルでも息づいているのです。
ブラジルという国の持つ、巨大な多様性を思うときに、その大きな魅力に改めて気づかされますね!
「ガウーショってなんか聞いたことがある気がするけど、なんなんだろ?」って思ってた皆さん、この記事は参考になったかな?ガウーショ言葉でポルトガル語を話すのも、なかなか「粋」なもんだよ。友達にブラジル人がいたら、ぜひ使ってみてピヨ!!
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