今回も引き続いて「ポルトガル語ネタ」です。
ポルトガル語の勉強を始めると、誰もが最初に覚えるのが、日本語の「あなた」はポルトガル語では「Você」だということ。
私は日本で15年以上、ブラジルのサンパウロでは1年以上ブラジル人とポルトガル語で話していましたが、この法則に疑いを持ったことは一度もありませんでした。
そんな私が衝撃を受けたのは、サンタ・カタリーナに引っ越した時でした。
スーパーマーケットで町の人と話していると、なんだかおかしい・・・
みんな聞き慣れない単語を使っている・・・「Tu(トゥ)」?
少しして気づく。
なんと、この町では「Você」の代わりに、「Tu」を使っているのだ。
そういえばポルトガル語の教科書で見たことがある。
普段は一人称の「Você」しか使わないが、本当は2人称の「Tu」もあることを。
疑問に思って、町の人に聞いてみたら、「サンタ・カタリーナのこの地方では、Vocêは使わないよ。Tuを使うよ。Vocêってなんか馴れ馴れしくて、ちょっと失礼な感じ・・・」だと。
ショックでした。
スペイン語はともかく、会話の中で「あなた」は必ず「Você」で、「Tu」なんて言葉は古い本か「聖書」の中でしか使われてないと思っていたので。
“Tu és Deus(あなたは神です)”、みたいな感じ。
ただ、Tuを使うと動詞の活用がややこしんですよ。
だから、「Você」と「Tu」を使うとなると、2種類の動詞の活用を覚えなくてはならない。面倒くさいですよね。
しか~し!!
彼らが話しているポルトガル語を注意して聞いていると、なんと「見事に」文法が間違っているのです!!
例えば、日本語で「あなたがこれをしたの?」だったら、「~する」を意味する動詞「Fazer」が以下のように活用します。
「Tu」の場合は:”Tu fizeste isso?”
しかし、何とか彼らは、
と、言っているのです!!
主語だけ「Tu」になって、活用は同じやん!!っていう突っ込みどころ満載の動詞の活用なのです。
曲がりなりにも、ポルトガル文法の基礎を勉強した私は、町の人に確認しましたね。
「文法的におかしいよね?」って。
ウザい日本人ですね。
でも、みんなは笑顔で「え~そうなん?でもこれが普通だから・・」との答えだけです。当然ですよね、みんな小さいころからその文法で話しているんだから。
念のためネットで調べてみました。
そしたら、面白い地図を発見。(英語ですみません)
この地図によると、オレンジの部分は「Tu」を「Você」の代わりに使ってるんですって!(サンタ・カタリーナもちゃんとその地域に入っていますね)
でも、オレンジの部分の説明文で (“Incorrecto conjugation”) って書かれているのが笑えるところですよね。オレンジの地域では「文法的に正しくない動詞の活用」で「Tu」が使われているんだって。
これで何となく理解できました。私の周りで起きているこの不可思議な現象の理由が。
でもブラジルって本当にすごいですね。いろんな意味で多様性がありますよね。正しい文法でさえ、地方によっては全く無視されて、みんながその間違った文法で毎日話しているんですから。
日本人は「正しい文法で話さないといけない、書かないといけない。」って強迫観念を学生時代から植え付けられていますよね。それが言語の上達を邪魔するときもあります。
でも、本場のブラジルでもポルトガル語はこんな状況なんですよ。それでもみんな何不自由なくポルトガル語を使って楽しく会話をしているんですよ。
そうなんです、文法的な間違いなんて気にしすぎなくていいんです。
あくまで、コミュニケーションのツールなんですから。
最初はどんどん話しましょう!そうすれば言語ってものは気づかないうちに上手になっていくもんなんです。
ありがとう、サンタカタリーナのみんな!!そして間違った文法!!
でも・・・
結局、私は「Tu」は使いませんでした。ずっと「Você」で通しましたよ、はい。
使っちゃうと、なんだか負けた気がするんで・・・(笑
「話せるポルトガル語」を「独学」で学んでみたい方はこちらをどうぞ・・・
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