今回は「ポルトガル語」のことについて書きます。
ただ書く前に、一つだけ前置きさせてください。
外国語のことを書いている他のブログなどを見ていると、読者から「それは違う」とか「本当はそうじゃない」なんて厳しいコメントが散見されます。
でもこれは当然のことです。
「日本語」のことを考えてみてください。日本語を勉強している外国人が1人いて、その周りに日本人が3~4人いるシチュエーション。そして、その外国人の方が、ある日本語の言葉の意味、そして使い方を質問します。
何が起きますか?
ほとんどの場合、意見が分かれますよね。
ある日本人が「その言葉の意味はこうだ。こう使うんだ」と言うと、別の日本人が「いやいや違うでしょ。こう使うんだよ。」と、それぞれ言うことが違うことがあります。
言葉というのはその人の育った環境、学んだ環境、読んだ本の種類など、様々の要素で意味も使い方も変わることがあるのです。
自分の知っているポルトガル語の意味や使い方と違うなと感じても、どうぞ「あ~、そんな使い方もあるんだな。」くらいの気持ちで受け止めてもらえると嬉しいピヨ
私が日本でブラジル人と過ごして学んだポルトガル語、あるいはサンパウロ、そしてサンタ・カタリーナで地元のブラジル人から学んだポルトガル語、そうしたものを少しずつ紹介していきたいと思っています。
それでは本題に入ります。
本屋さんに行くと、よく「ブラジルポルトガルの日常会話」という教材がありますよね。私も日本にいた時に、購入してよく読んでいました。
でも、ブラジルに行くと気づかされるのです。
「日常」ってどこの日常のこと?って。
ではさっそく、「日常的」ではない「日常会話」を見ていきましょう!
「発音・アクセント」の違い
ブラジルという国はホントに大きい。面積は日本の約23倍あります。
ですので現地で話されているポルトガル語にも、当然、その地方ごとに「Sotaque(アクセント)」があります。
よく言われるのがサンパウロとリオデジャネイロのポルトガル語の違いです。
“Nós somos amigos.(私たちは友達です)”
これをサンパウロの人に発音してもらうとこうなります。
「ノォス ソーモス アミーゴス」
でもリオデジャネイロの人が発音すると・・・
「ノォシュ ソーモシュ アミーゴシュ」
ってなります。
あと、
“Por quê?(なぜ?)”
に関しては
サンパウロの人
「ポォル ケ?」
リオの人
「ポォフ ケ?」
(うまくカタカナでは標記できませんが、「ォフ」の部分は鼻に近い喉の奥を空気がこするような音です。)
口の悪いパウリスタ(サンパウロの人)は、「リオの人たちは、口に卵を入れてポルトガル語を話している」なんて言っていますが、Rの発音の所では、こもったようなモゴモゴしたような発音が特徴ですね。
文字だけでは、ちょっとした違いに見えるかもしれませんが、音を聞くとハッキリこの違いは分かります。
面白いのが、ブラジルのポルトガル語には日本でいうところの「標準語」というものなないように思います。日本ですと、都道府県ごとにアクセントの違いはありますが、ほとんどの方は他県の人と話すときは、NHKのアナウンサーが話しているような「標準語」を話します。
ですので、家族には方言で話すが、家の外では「NHK標準語」といった使い分けをしています。
でもブラジルはNHK的な標準語がないんですね。
サンパウロの人もリオの人も、自分のポルトガル語が標準だと思っているので、相手の発音に合わせる気など全くありません。それに、共通の標準的な発音もないので、みんなが一つの標準発音に合わせて話そう、ということもないのです。
「方言」の違い
あと発音に加えて「Dialeto(方言)」もあります。
これは日本でも同じですよね。その地方の人にしか通じない言葉です。
私にとって特にその衝撃が大きかったのは、サンパウロからサンタ・カタリーナに引っ越した時でした。(以下の地図のSCの部分です)
引用元:Região Sul – Geografia – InfoEscola
例えば「お金の単位」。
ブラジルの通貨単位は「Real(レアル)」ですが、私が住んでいたサンタカタリーナの町ではヘアウのことを「Pila(ピーラ)」ってみんなが言っているんです。
町の人:「いらっしゃい、20ピーラだよ」
私:「なにそれ・・・?」
お金の単位の呼び方が違うっておかしくないですか??
よくSF映画で宇宙人と話しているときに、他の星の通貨名が出てきますよね。
それを聞いた気分でした・・(笑
あと、フランスパンはサンパウロでは、“Pão francês(パォン フランセース)”っていいますが、サンタ・カタリーナのでは“Cacetinho(カセチーニョ)”って言います。
パン屋に行ってフランスパンを買おうとすると、“Quantos cacetinhos tu quer?(いくつフランスパンが欲しいの?)”なんて聞かれます。(Tuの使い方も独特で以下のブログで説明しています)
Cacetinhoってのは、サンパウロでは「お仕置き棒」とか「しつけ棒」って意味で、最初は店の人が相手が何を言っているのか全く分かりませんでした。
こんな風に、生活の中のごく日常的なものまで使っているポルトガル語が違うのです!!
日本で売ってるポルトガル語の教科書には「日常会話」と書かれていますが、それは、あくまでサンパウロの日常会話であり、他の州や地域に行くと、それはまったく「日常」ではありません。
以下のYouTubeは、サンパウロと南部ブラジル(サンタ・カタリーナ(SC)やヒオ・グランジ・ドゥ・スウ(RS))のポルトガル語の単語の違い(意味は同じなのに)を面白く紹介しています。
興味があるようでしたら一度ご覧ください。
私がサンタカタリーナで生活しているときは、いつもメモを持ち歩いていました。カタリネンシ(サンタカタリーナの人)が聞いたことのないポルトガル語を話すと、すぐにメモして、次の機会に使う。そうすることによって、地元の人たちとの距離はグーっと近くなりました。
また別のブログで、サンタカタリーナで使われている独特のポルトガル語単語、方言、そしてポルトガル語の文法などに関してお伝えしますね。
「話せるポルトガル語」を「独学」で学んでみたい方はこちらをどうぞ・・・
・・・で、結論はと言いますと。
ブラジルという他民族の広大な国において、「日常会話」そして「標準的なポルトガル語」を定義するのは難しい。そもそも、NHKの標準的な日本語のようなものが、ブラジルにはないからである。
つまり、本屋で買った「ブラジルポルトガル語の日常会話」の教材は参考程度に考えて、現地に行って、町の人の話しているポルトガル語を聞いて、自分なりの辞書を作りましょう!そしてそれをどんどん使いましょう!
そうするなら、町のみなさんとさらに「Amizade(友情)」を深めることが出来るはずです!!
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